感情と向き合うことの大切さ – イタリアでの学びとポジティブ心理学の視点から

私がイタリアで過ごした時間は、感情との向き合い方について深い気づきをもたらしてくれました。

日本人として育った私たちは、しばしば感情を抑制することを美徳とし、特に否定的な感情は隠すべきものとして扱われがちです。

しかし、イタリアでの経験を通じて、感情を適切に表現し、受け入れることの重要性を学びました。

今回は、この学びをポジティブ心理学の知見と照らし合わせながら、感情を無視しないことの利点について考えてみたいと思います。

イタリアでの気づき – 感情表現の豊かさ

イタリア人との交流で最初に驚いたのは、彼らの感情表現の豊かさでした。

喜びも悲しみも怒りも、その時々の感情を躊躇なく表現する姿は、最初は戸惑いを感じるほどでした。

ときにうるさいほど。しかし、時間と共に、その表現の仕方には大きな意味があることに気づきました。

彼らは感情を表現することで、より深い人間関係を築いていました。

例えば、意見の相違があった時も、その場で感情を伝え合い、議論を重ねることで、むしろ関係性が深まっていくのです。これは、感情を抑え込むことで生まれる誤解や距離感とは対極的な現象でした。

ポジティブ心理学からの視点

ポジティブ心理学の創始者として知られるマーティン・セリグマンは、人間の幸福には「ポジティブな感情」「エンゲージメント」「関係性」「意味」「達成」の5つの要素(PERMA)が重要だと提唱しています。

この観点から、感情を適切に表現することの利点を考えてみましょう。

  1. 感情的知性の向上
    感情を認識し、適切に表現する能力は、感情的知性(EQ)の重要な要素です。自分の感情を理解し、それを適切に表現できることは、他者との良好な関係構築に不可欠です。イタリアの文化では、この能力が自然と育まれる環境が整っているように感じました。
  2. ストレス軽減効果
    感情を抑制することは、大きな精神的エネルギーを必要とします。ポジティブ心理学の研究では、適切な感情表現がストレス軽減に効果的であることが示されています。イタリアの人々の開放的な感情表現は、このストレス軽減効果を自然に取り入れているといえるでしょう。
  3. 本来性(オーセンティシティ)の実現
    ポジティブ心理学では、本来の自分らしさを生きることの重要性が強調されています。感情を適切に表現することは、この本来性の実現に大きく貢献します。イタリアでは、人々が自分の感情に正直に向き合い、それを表現することで、より本来の自分らしく生きているように見えました。
  4. レジリエンスの強化
    逆説的ですが、否定的な感情も含めて全ての感情を受け入れることは、精神的な回復力(レジリエンス)を高めます。イタリアの人々は、困難な状況でも感情を表現し、周囲のサポートを得ることで、より早く立ち直る力を持っているように感じました。

実践的な学び – 日本での適用

もちろん、イタリアの感情表現をそのまま日本に持ち込むことは現実的ではありません。しばしば、感情をあらわにすることは幼稚とも受け取られるからです。ただ、文化的な違いを考慮しながら、以下のような形で実践することが可能です。

  1. 小さな場面からの練習
    家族や親しい友人との関係から、より素直な感情表現を心がけてみましょう。「嬉しい」「悲しい」「困っている」といった感情を、アサーティブな形で、適切な文脈の中で表現することから始めることができます。
  2. アートや創作活動を通じた表現
    直接的な感情表現が難しい場合は、絵画や音楽、書き物などの創作活動を通じて感情を表現することも有効です。これらの活動は、感情を安全に表現する練習の場となります。
  3. 感情日記の活用
    日々の感情を振り返りだけでも記録することで、自身の感情パターンを理解し、より適切な表現方法を見つけることができます。これは、ポジティブ心理学でも推奨されている方法です。

感情を受け入れることの社会的影響

個人レベルを超えて、社会全体で感情を適切に扱うことの重要性も考えてみる価値があります。

  1. コミュニケーションの質の向上
    感情を適切に表現し、受け入れる文化は、より深いコミュニケーションを可能にします。これは、職場や学校などのあらゆる場面でのパフォーマンス向上につながります。
  2. メンタルヘルスの改善
    社会全体で感情表現を受け入れることは、メンタルヘルスの改善にも貢献します。特に、ストレス社会と言われる現代において、この視点は重要です。
  3. 創造性の促進
    感情を自由に表現できる環境は、創造性の発揮にもつながります。イタリアの芸術や文化の豊かさは、この点と無関係ではないでしょう。

まとめ – バランスの取れたアプローチへ

イタリアでの経験とポジティブ心理学の知見は、感情との向き合い方について重要な点に気付かせてくれます。

重要なのは、感情を完全に解放することでも、完全に抑制することでもなく、適切なバランスを見つけることです。

文化的な背景や個人の特性を考慮しながら、自分なりの感情表現の方法を見つけていくことが大切です。

それは、より豊かな人生を送るための重要な要素となるはずです。

感情を無視せず、適切に向き合うことは、個人の幸福度を高めるだけでなく、より健全な社会の構築にもつながります。

イタリアでの経験は、この普遍的な真理を改めて教えてくれました。

私たちは、感情を「制御すべきもの」から「理解し、活用すべきもの」へと視点を変えることで、より充実した人生を送ることができるでしょう。

ポジティブ心理学が示す「よりよく生きる」という目標への重要な一歩となるはずです。

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